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小石川弥生のブログ小説

ブログで小説 絵本、イラストを書いています。

ブログ小説「遺言」鍵 3話

駅のプラットホームを出て 改札口を通ると あの頃とは 違う景色が目に飛び込んだ。

二十年も前になれば 当然街並みは変わってしまうだろう......ただ、この駅は あの頃の 面影が多少 残っていて 懐かしさを覚えた。

駅の階段を 降りてすぐの タクシー乗り場で タクシーに乗り込み
運転手に 住所を伝え 父さんが指定した 相手宅へと 向かってもらった。

タクシーの中で 父さんとこの相手の人は どういう関係なのか それが気になり少し不安に刈られながら 窓の過ぎ去る景色を 眺めた......

駅を降りてから 30分くらい 走ったであろうか タクシーが ある一軒家の前で停止した。

一軒家の門にある 表札を確かめると ここで 間違えなかった。
タクシーを 降りて 門の横のインターホンを 鳴らすと インターホンから 声が流れ
「どちら様ですか?」
と、訪ねられ
僕は 少し緊張しながらも 父さんの名前を出してみた。
「突然すみません。柏木 倫明(かしわぎりんめい)の......」
と、言いかけてる途中で 玄関の開く音が聞こえ バタバタと慌ただしく 駆け寄る音がした。
すると 門の扉が開き 顔を出したのは 父さんより 少し若いくらいの 優しそうな おばさんだった。

僕の顔を見ると 微笑んでくれ
「よく来てくれたね。あがってあがって」
僕を 怪しむ事なく それよりも なんだか 喜んでくれているような そんな感じで 僕は 少し戸惑いながら 家の中へ通してもらった。

8畳位ある 和室に 座卓が置かれ 開いた障子の向こうは 縁側になっていて 大きなガラスドアから 見える庭は 和庭園のように 木々が整えられて ステキだった。

その光景に見とれていると
「はい。お茶よ 飲んでちょうだい。」
和菓子と一緒に お茶を入れてくれ 僕は 頭を軽く下げ お礼を言った。
「ありがとうございます。頂きます。」
入れてくれた お茶を頂いていると おばさんは 僕をじっと見つめながら
「あなた 本当に倫明さん......お父様にそっくりね」
と、驚いていた。
この人は 父さんと かなり親しい感じだったので 僕は 勇気を出して 聞いてみた。
「あの......もし 失礼だったら すみません。父さんとは どういう関係ですか?」
一瞬 間かあき 急に 笑いだし
「ふふふふ......それはそうよね...ふふ...ごめんなさいね。笑ってしまって 愛人じゃないわよ......ふふ...あっ!ごめんなさいね。冗談よ......お父様は お元気?」
その言葉に 僕は 少しためらったけど
「父は 亡くなりました......49日が過ぎたとこです。」

おばさんは 驚きのあまり 暫く呆然とし 言葉を失っていた。
さっきとは 空気が変わり 重たい空気が流れ おばさんも 申し訳なさそうに 眉が下がり 言葉につまりながら

「ごめんなさいね......」
と、謝ってきたので
僕も、慌てて
「だっ大丈夫です。気になさらないでください。もう平気ですから」
と、答えた。
また、少し沈黙が続き ようやく話てくれたのは
「だからなのね......倫明さん......いつか息子が 家にくるからって......その時は...ちょっと 待ってて...」
そう言うと 席を外し 何かを探しに行ってしまった。

暫くして 戻ってくると
「ごめんなさいね...お待たせしちゃって これ 倫明さんから 預かってたの......息子がきたら 渡してほしいって」

渡されたのは 小さな箱だった。

この時 心臓の鼓動が 早く波打つのが 全身に伝わり さらに緊張したのを 覚えてる。
小さな箱の 蓋を開けると 中に鍵が入っていた。
思わず
「これは?何の鍵ですか?」
と、問いかけてしまった。
すると
「ごめんなさいね。私には分からないの......ただ 渡してくれと 頼まれてね...それから 詳しくは言えないけど...私たち家族は 倫明さんに 昔助けてもらってね......だから あなたのお父様は 私たち家族にとって 恩人なの......今でも 感謝してる......助けて もらったご恩を お返しできなくて...本当に 申し訳ない気持ちで......いっぱいです。」

なんだか 僕が申し訳なくて 胸がつまる思いになってしまった。