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小石川弥生のブログ小説

ブログで小説 絵本、イラストを書いています。

ブログ小説「回想」10話

書斎で見つけた 書物の中に 一冊のノートを見つけた......
それは、衝撃的な言葉から 始まっていた。

ラジオの君......

あの日 突然ラジオから
ジィジジジー
ノイズが
私は、ブラックコーヒーを飲みながら ラジオを叩いた......

「......家電の買取りは 年式を見させて頂いてからの査定になりますので......ジィジジジー
あっスミマセン ......古いと買取りできないジィジジジー
私は 思わず 口の中に入ってた ブラックコーヒーを 机の上に 吹き出し
クスクスと
ラジオから聞こえてくる 買取りの話に 笑ってた......
何?買取り?何の話?
クスクス おもしろい......
すると、
「ジィジジジー......くん 買取りヘルプ お願いね......
あっ!商品 陳列してからでいいですか?
いいわよ!そっち終わったら手伝って」
ジィジジジー ジジジ

変な話
この時は ラジオから流れる ストーリーくらいにしか思ってなかったけど......
その日以来 たまに聴こえる その人の声に
何故か 心がほんわりと 温かく優しい気持ちになれた......

知らず知らずのうちに メモを取るようになって その人の名前やお店や住所 担当コーナー......
私は 自分の家系がずっと嫌で 働く事も許されず 外出も制限があり 窮屈なこの生活がずっと嫌だった......
唯一 ラジオだけは 祖母の形見なので 聴くことは許されていた。
そんな中の ささやかな 楽しみで そこから
たまたま ラジオから流れた ストーリーの この板谷トオルくんに 初めて私は 恋をしたようです。

勝手に トオルくんなんて 呼んでしまって 自分でも 恥ずかしいけど
ラジオから流れる トオルくんは マジメでがんばり屋で 人に優しく たまに失敗して 一人でぶつぶつ独り言を言いながら 落ち込んで
一緒に働く仲間と 助け合いながら 毎日を大事に生きている人......
どんな 表情で笑うのかな......困った顔はどんな感じになるのかな......

そんな ある日
ジィジジジージジジ ジィジジジー
また、ラジオにノイズが......
「速報です!◯◯県◯◯市の住民の方 速やかにジィジジジー......してください!くり返します。ジィジジジージジジの方 隕石多数落下の恐れ有り 速やかに避難してください!落下予定時刻は 午前9時頃となります。速やかに 避難してください!」

えっ!!何?いつ?
そして、ラジオが壊れてしまった......

胸の鼓動に衝撃が走り 耳の側で心臓の音が鳴っているかのように 響く鼓動
冷静になれ 冷静になれ 何度も繰り返し
気持ちを落ち着かせたけど ......
不安な気持ちの方が 遥かに勝り 冷静になんかなれない......

急いで 母に連絡し 状況を確認してもらう

母から連絡をもらうまでは とても生きたここちがしなかった......

時間だけが流れ 母から連絡がやっときたとホッとし 確認したら
そんな情報はないと言われ......
あの ラジオから流れた情報は いったいなんだたのか不思議で 自分の中の不安が抜けず

もう一度 ラジオから流れた言葉を思い出しながら メモを取る。
メモを取りながら ふと、手が止まる......
そして、前に取ったメモと今書いたメモを見比べて確認すると......
避難しなければいけない地域と板谷トオルくんの働いている所の地域が一緒だった事に気づき......頭の中で 葛藤し始めてしまった。

まずは 冷静になれ
心に言い聞かせて ラジオ局に電話を入れ確認を...............他の局も確認してもらい......

返ってきた返答に......持っていた受話器が手から離れ 受話器は ぶら下がったまま ゆらゆらと揺れていた。

血の気が 一気に下がり 目の前の景色が 波打つように 揺られ 足が上手く前に進まない。
母の帰りを待つ事しかできなくて
涙が溢れ 止まらなくて......怖かった。

帰ってきた 母に泣きながら お願いをし
連れていってもらった......
確かめたかくて 会いたくて どうしようもなくて

何時間もかけて たどり着いた......母を車で待たせて
店の中に......
「いっしゃいませ!」

不安で 本当に......
「あの......どうかされましたか?」
えっ!!
あれ?どうしよう...涙が......涙が......とまらないよ......どうしよう......
困っちゃうよね...ごめんなさい......涙が 止まらなくて 言葉が出なくて
「よかったら 少し 休憩室で 落ちつくまで いていいから......おいで」
頷くのが 精一杯で......

「ここ座ってて 今お茶入れてあげるから 少し待ってて」
優しくされて また......涙が溢れて
「はい!これ飲んで少し 落ち着こうか」
優しく微笑んでくれて 背中を擦ってくれて
ちゃんと話さないきゃ
「ラジオがね ラジオが......壊れちゃって......聴こえなくなちゃた...の...え~ん」
また、優しい言葉をかけてくれた
「ちょっと、待ってて......僕が 店で使ってるやつがあるから......私物で悪いけど これあげるよ!」
そう言って、私の手にラジオを......
私は、頭を下げる事しかできなくて それでも 優しく笑いかけてくれて
嬉しかった......トオルくんに会えて......

トオルくんは 存在した......
そして、あのニュースも 存在するんだと確信できた......私が やるべき事は......