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小石川弥生のブログ小説

ブログで小説 絵本、イラストを書いています。

ブログ小説「ひととき」26話

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その夜
いつ終わるか 分からない この世界で かけ換えのない この二人だけの時間を......
僕らは 余すことなく語り
初めてサクラと 窓から見える 太陽の昇る時を こんな形で 見る事になったけど......
その光景は 植物についた 朝露が キラキラと輝き 宝石のように 美しく 心に染みる 瞬間だった。
言葉のいらない ほんの一時 サクラの肩を抱き寄せ この世界を二人で見つめた......

そして、それは また......一瞬で......ここからは この世界を守る為に 僕らは 動き出した。

僅かな着替えの入った リュックの中から 僕は サクラが 書いた書物を取り出し
サクラに見せた。
サクラは 驚いた様子で
「どうして これを......トオルくんが 持ってるの?」
「話すと 長くなるから 簡単に言うと サクラの家の書斎で 見つけたんだ。これは サクラが書いたやつだよね?」
サクラは 少し考えこみ 説明に困った様子で
言葉を濁しながら
「ここに 書いたのは 私だと思うけど......私じゃないの......
ごめん......伝わらないよね......きっと 過去の私が書いたもので 今の私は何も書かなかったの......」
僕の方が 驚き過ぎて 言葉がでなかった。
頭の中を 整理しながら ゆっくりと考え 書物の中に 僕が知ってる 光景があった事を 書物を巡り サクラに見せると
「私も それは思ったけど 少し違うの ここに書いてある 母親は 多分本当の 母親で 今の私には 母親はいないから......トオルくんが 見た母親は 多分......東條さんの事だと思う
私の中にある 過去の記憶は ラジオから流れる トオルくんの声を聞いてから 頭の中に 走馬灯のように 流れ込んで やっと書物に書いてあることが 少し理解できただけで......書物に 書いてある過去が 今は少し違ってて 私には それが......怖くて 書けなかった......自分が何かしら未来を 変えてしまってるんじゃないかって......すごく怖くて......」

不安に押し潰されそうな サクラを 僕は 強く抱きしめ

「僕は......サクラが 目覚めるまで ずっとずっと 不安だった......こうして サクラと話せる事が 僕にとって 奇跡で......サクラが言う未来を変えてしまったんじゃないかって 思って悲しんでいるなら それは 違うよ......未来が変わるなら こうして僕がサクラとここで この世界を救う事は できるかもしれないって ことになるんだ。

僕らが もしそれを叶えられなくても また未来の僕らが それを叶えてくれる。
だから 悲しい事なんかじゃなくて いつか叶う奇跡なんだと思う。」


僕は この時 絶対叶うと......奇跡を信じた。